Research Highlights

準結晶:顕微鏡下での成長

Nature Nanotechnology 2015, 915 doi: 10.1038/nnano.2015.210

長距離秩序はあるが周期性のない固体物質は、準結晶と呼ばれている。準結晶は、1982年にダン・シェヒトマンによって電子線回折実験で初めて観察され、後にシェヒトマンはこの発見によってノーベル化学賞を授与された。準結晶は、原子配列が特異なため、その成長機構について多くの疑問が生まれ、さまざまな理論モデルが開発されてきた。東京大学と東北大学の枝川圭一たちは今回、in situ透過電子顕微鏡を用いて、準結晶の成長を直接観察した。

枝川たちは、アルミニウム、ニッケル、コバルトでできた準結晶合金(Al70.8Ni19.7Co9.5)を調べた。この準結晶は、結晶学的に「禁じられた」10回回転対称性を持つ。再結晶化が起こり得る1,183 Kに温度を保持した試料に対して、一連の画像が撮像された。この画像を解析すると、頻繁に起こる構造の乱れと修復が成長過程に関与しており、ほぼ完全な準結晶秩序を持つ構造体が得られることが明らかになった。こうした成長が起こる正確な機構はまだよく分かっていないが、枝川たちは、この過程は以前に提案された理想モデルとは異なっていると示唆している。

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