Research Highlights

量子ポイントコンタクト:スピンを測る

Nature Nanotechnology 2015, 915 doi: 10.1038/nnano.2015.211

量子ポイントコンタクトは、静電ゲーティングによって二次元電子系に形成される細いくびれである。横方向の閉じ込めによって、量子ポイントコンタクトの電気伝導度が、2e2/hの整数倍に量子化される。ここで、eは素電荷、hはプランク定数である。この電気伝導度に、0.7 × 2e2/hで異常が現れる。その起源は、異なるスピン配列を予測するさまざまな競合理論によって、とりあえず説明されている。今回、理化学研究所創発物性科学研究センター、スロバキア科学アカデミー、茨城大学の川村稔たちは、量子ポイントコンタクトにおける電子磁化を測定し、この0.7異常の起源の手掛かりを得た。

川村たちは、GaAs/AlGaAs高移動度ヘテロ構造体から作られたポイントコンタクトの電気伝導度を、面内磁場の存在下において20 mKの温度で測定した。その結果、核磁気共鳴の抵抗検出が実証された。この核磁気共鳴から電子磁化を推測できる。今回の方法は、電子スピン数個分の磁化を測定する新しい手法である。川村たちは、ゲート電圧を上げるにつれて磁化がなめらかに変化することを見いだした。こうした結果は、0.7異常を生じさせる可能性のある束縛状態が量子ポイントコンタクトにはないとするモデルと一致し、この描像に一致しない理論は除外される。

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