Research Highlights
二次元材料:半金属の黒リン
Nature Nanotechnology 2015, 915 doi: 10.1038/nnano.2015.212
グラフェンは、高い電子移動度を示すが、半金属つまりバンドギャップがゼロの半導体である。伝導帯と価電子帯の間の有限のギャップが、デジタル電子デバイスに用いるのに不可欠な必要条件であるため、この二次元材料がグラファイトから初めて単離されて以来、グラフェンに半導体ギャップを生じさせることが、主要な研究目標の1つであった。この問題を解決するもう1つの方法は、自然状態でギャップを示す別の二次元材料を見つけることであり、1年ほど前にこうした材料が見つかった。フォスフォレン(phosphorene)である。浦項工科大学、延世大学、浦項基礎科学研究院(いずれも韓国)、ローレンス・バークレー国立研究所(米国)のK S Kimたちは今回、数層のフォスフォレンからなる黒リンの試料を出発点として、外部ドーピングを用いてギャップを小さくし、グラフェンに似た半金属を作製できることを示している。
Kimたちは、黒リンの上面にカリウムを吸着させてドープした。次に、その電子バンド構造の変化を、角度分解光電子分光法によって測定した。ドーピングレベルを増すことによって、初期値の0.6 eVからギャップが小さくなってゼロになった。Kimたちは、ギャップが小さくなってゼロになるのは、カリウムドーパント原子によって上面に過剰電荷が作られ、電場が生成された結果であると示唆している。これは密度汎関数理論計算によって裏付けられた。