Research Highlights
ナノ構造体:青色の謎
Nature Nanotechnology 2016, 116 doi: 10.1038/nnano.2015.325
多くの生物に見られる色は、色素による特定の波長の光の吸収やナノ構造体による光の散乱に起因する。こうした色の大半は、雌雄選択と自然選択の両方を通して進化するため、自然個体群において色がどのように進化するかを調べるのは難しい。アクロン大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校(いずれも米国)のB-K Hsiungたちは今回、雌雄選択の影響を除外するために、視覚機能の劣るタランチュラを用いて、タランチュラが多様なナノ構造体を持っているにもかかわらず、青色の反射率が進化的に保存されることを示している。
Hsiungたちは、さまざまな種類のタランチュラの色を調べ、青色が緑色よりもよく見られることを見いだした。電子顕微鏡を用いてこうしたタランチュラの特殊化した毛を詳しく調べると、少なくとも3つの異なる形態が発見された。つまり、滑らかな円柱状の毛、不規則なブレードのような突出部のある毛、対称的なローブ状の突出部を持つ毛である。毛の皮質の下は、スポンジ状の準規則構造か組織化された多層構造のナノ構造体であった。さまざまなタランチュラから得られた青色の毛は、450 nm付近に分散する反射率ピークを示し、わずかに玉虫色だった。理論モデルによって、この青色は準規則構造と多層構造の両方に起因することが確かめられた。タランチュラの視力が低く、視覚で求愛しないことを考えると、青色は性的なシグナルではなく、その機能はまだ分かっていない。
Hsiungたちは、自然選択の下での構造色の進化を解明すれば、新しいフォトニックナノ構造体の設計に役立つ可能性があると示唆している。