Research Highlights
ナノテクノロジーと食品:人々が考えること
Nature Nanotechnology 2016, 116 doi: 10.1038/nnano.2015.326
社会に建設的な影響を与える新たな技術には、その潜在的な利益とリスクを社会がどのように理解するか推測することが重要である。例えば、ナノテクノロジーを食品産業に用いようとする場合、潜在的消費者がナノテクノロジー食品を受け入れるかどうか、快く代金を支払うかどうかを正しく評価することが不可欠である。残念ながら、こうした側面の調査を目的とした研究の数は限られている。ティーズサイド大学とニューカッスル大学(いずれも英国)のE Gilesたちは今回、このテーマに関する文献を広範囲に調べ、現在の状況に対する包括的な描像を引き出した。
Gilesたちは、32本の論文を評価し、食品におけるナノテクノロジーの利点とリスク、社会的な影響や人口統計学的な影響による認識の変化、公衆が入手する情報のレベルなど、8つの主要なテーマを識別した。今回の評価は、全般的に公衆は、食品よりも食品包装へのナノテクノロジーの利用を受け入れる傾向が強いことを示唆している。しかし、食品の生産へのナノテクノロジーの利用は、遺伝子組み換えなどの他の食品加工技術に対する拒否反応を踏まえて予想されるような、否定的な反応を公衆から受けないようである。こうした総体的結論は疑問の余地がないように思われるが、この研究は、食品におけるナノテクノロジーのどのような利点を公衆が認識しているかを調べるだけでなく、何がリスクになるのかを理解していることについても調査するために、より体系的で詳細な研究の必要性も明らかにしている。