Research Highlights
らせん状の半導体:無機材料
Nature Nanotechnology 2016, 1216 doi: 10.1038/nnano.2016.249
らせんは、生物学においてよく知られている二次構造で、その規範的な例がDNAの二重らせんであり、これまで非常に多くの有機物質やポリマー材料に見いだされている。LiPは、安定した二重らせんになると計算によって予想されているが、鋳型を使った例はあるものの、安定な無機らせんはまだ実現されていない。今回、ミュンヘン工科大学(ドイツ)のT Nigesたちは、原子レベルの二重らせん構造を持つ無機化合物を初めて合成した。
Nigesたちは、固体アニーリング反応によって単一相の結晶SnIPを作製した。この結晶の単位格子には、ねじれたP-鎖とSnI+/鎖が含まれ、互いに巻き付いて直径約1 nmの二重らせんを形成している。SnとPの孤立電子対の配位相互作用によってこの2つの鎖が安定になり、絡まり合った2つのらせん間のこうした引力相互作用は、ファン・デル・ワールス力や典型的な(例えばDNAの)水素結合より強い。このことから、バルク結晶を破壊せずに完全に折りたたむことができるという、興味深い機械的性質が生まれる。この材料は、直接バンドギャップが1.86 eVでフォトルミネセンスを示すことから、こうした半導体らせんをフレキシブルエレクトロニクスに応用できると著者たちは示唆している。さらに、バルクのSnIPを裂いて、計算によって得られたバンドギャップが適度に大きい(2.28 eV)、直径約15 nmのナノロッドを作ることもできる。