Research Highlights
オンチップの単一光子発生器:ファン・デル・ワールスヘテロ構造体
Nature Nanotechnology 2016, 1216 doi: 10.1038/nnano.2016.252
量子領域への情報技術の拡張は、量子相関特性を制御して単一光子を生成できる光電子デバイスを開発しようとする最近の取り組みの動機となっている。応用の可能性を考えると、こうしたデバイスの大きさはナノスケールに縮小できるのが望ましいが、その一方で単一光子生成を誘発するのに必要な刺激は電気によるものであるのが望ましい。しかし、こうした要求を同時に満たすデバイスはほとんどない。
今回、ケンブリッジ大学(英国)と物質材料研究機構のM Atatüreたちは、積層した2D材料を用いた電気的に駆動される単一光子発生器を報告している。このデバイスでは、グラフェンからp型のWSe2またはWS2へ電子が注入され、正電荷と負電荷が再結合して発光する。窒化ホウ素層がこの過程に対する障壁となっており、このデバイスにバイアスをかけると電荷が注入されるトンネル確率が高まる。意外なことに、単一光子を放出する領域は空間的に局在しており、トンネル電流の強さを調節することよって単一光子放出をオンオフできる。
今回報告された現象は低温で効果的であるが、はっきりとした量子相関のない空間的に均一な背景放射という難点がある。それにもかかわらず、こうした結果から、単一光子発生器のスケーラビリティーとオンチップ集積に大きな可能性が生まれる。