Research Highlights

分子機械:分子機械の歯車の歯

Nature Nanotechnology 2016, 1216 doi: 10.1038/nnano.2016.271

プロトン輸送は、例えばタンパク質チャネルの水素結合ネットワークを通るものなど、生物学のいたるところに姿を現す。プロトンシャトルがいくつか実現されているが、そうした系が機能性材料のスイッチング機構として利用されたことはほとんどない。今回、九州大学と物質・材料研究機構の佐藤治たちは、分子内のプロトンの往復運動によって、マクロスケールで膨張・収縮する超分子有機構造体(SOF)を設計している。

まず佐藤たちは、アゾジピリジンとテトラカルボン酸からSOFを作った。これらの基は、互いに水素結合して菱形の格子を形成し、ラックアンドピニオン(ギア)カスケードの基盤となる。温度が変化すると、ピリジン基によってカルボン酸内のプロトンシャトルが促進され、アゾジピリジンの回転とテトラカルボン酸の相関並進が生じる。言い換えると、回転運動が直線運動に変換される。密度汎関数計算によって、カルボキシル基のイオン化がアゾジピリジンのペダル運動を速度論的に促進していることが示唆された。この熱的に誘導された過程には、単結晶から単結晶への相転移が関与している。ネットワークを通してこうした運動が伝播し、約1.82 mm(123 K~333 K)という結晶の巨視的な膨張と収縮が生じた。

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