Research Highlights
ナノ材料:共有結合による溶接
Nature Nanotechnology 2016, 1216 doi: 10.1038/nnano.2016.273
炭素系材料は、急速に実用化されている。しかし、その優れた電気的特性や機械的特性の多くはナノスケールでしか現れないため、マクロサイズのデバイスの設計は制約されている。炭素系ナノ材料の可能性を探るには、2D構成要素を組み立てて3Dナノ構造体を作る必要があり、この際ナノスケールの性能を損なわないようにするのが理想的である。
メリーランド大学(米国)のL Huたちは今回、導電率と引張強度を高めたバルク材料を炭素ナノファイバーネットワークから作製する方法を提案している。加工処理されていないマトリックスでは、織り混ぜられたアモルファスナノファイバーが、弱いファンデルワールス力を介して互いに相互作用している。超高速電流パルスによって生じた高温のジュール加熱によって、隣接する炭素ナノファイバーが交差する場所でのナノファイバーの緩やかな融合が可能になる。この加熱効果によって、ナノファイバーのさらなる炭化も生じ、得られた3Dマトリックスは、結晶性が高く、強い物理的結合や化学結合を持つ。アモルファスナノファイバーと比べると、共有結合によって相互接続された炭素ネットワークの導電率は、4桁以上高かった。面白いことに、同じ条件を他の炭素系ナノ構造体に適用してもうまくいかなかった。結晶性の高いカーボンナノチューブでは、ジュール加熱によって強いC–C結合に変形が生じ、電子物性が全体的に劣化したのである。