Research Highlights
神経形態学的計算:賢いアナログメムリスター
Nature Nanotechnology 2016, 1216 doi: 10.1038/nnano.2016.274
メムリスターの電気抵抗状態は、それまでにこのデバイスに加えた電流と電圧の履歴の関数になる。こうした挙動は、生物シナプスの活性依存性可塑性によく似ているため、メムリスターは、神経形態学的ハードウェアアーキテクチャーに学習過程を実装するのにうってつけの候補となっている。アナログメムリスターが取りうる抵抗状態は多値なので、生物シナプスによく似たものが得られるのである。しかし、アナログメムリスターネットワークに基づく教師なし学習過程の実装は、ほとんど報告されていない。
今回、イタリアのCNRと英国のサウサンプトン大学のE Coviたちは、125個のアナログメムリスターからなるネットワークが、教師なし学習課題を再現できることを報告している。個々のメムリスターはTiN/HfO2/TiNヘテロ構造体で、Coviたちは、フィラメント抵抗スイッチング過程を利用して、シナプス可塑性をこのネットワークで模倣した。メムリスターネットワークによって、2層の人工ニューロン、いわゆる前段ニューロンと後段ニューロンが接続されている。個々の前段ニューロンが黒画素か白画素になる5 × 5正方配列の前段ニューロンによって、ネットワークへの入力信号として文字の画像が与えられる。最初の活性化された後段ニューロンによって、出力信号が決まる。教師なし学習過程後に、このネットワークは、特定の後段ニューロンと、示されているそれぞれ異なる文字を結びつけることができ、認識に成功したことが実証された。この結果は、雑音の多い入力画像や不完全な入力画像でも検証された。