Research Highlights

食品のナノテクノロジー:銀で被覆した包装

Nature Nanotechnology 2016, 216 doi: 10.1038/nnano.2016.11

銀に抗菌性があることはよく知られている。このため、食品の保存可能期間を延ばすために、さまざまな包装や保存容器に銀ナノ粒子が現在使用されている。しかし、特に銀ナノ粒子の毒性が十分に解明されていないため、ナノ粒子が食品に移動する可能性が懸念されている。こうしたことから、いくつかの国々では、一時的にせよ食品包装製品の一部の販売が禁止されるようになった。これまでに、食品保存容器から放出されて食品に入る銀の総量が、多くの研究によって調べられている。今回、デンマーク工科大学のA Mackevicaたちは、総量だけでなく、粒子の大きさ、個数濃度、移動速度の観点から、保存容器からの銀の放出を調べている。

Mackevicaたちは、4つの製品(食品保存箱2つと保存袋2つ)の中に3種の食品類似物(ミリQ水、90%エタノール溶液、3%酢酸溶液)を入れ、10日間放置して調べた。次に、さまざまな顕微鏡技術とともに、質量分析法を用いて、物質の移動を分析した。食品類似物に含まれていた銀の総量は、欧州食品安全機関などの食品当局が定めた限度より少なかった。しかし、銀はナノ粒子の形で移動でき、食品類似物として酢酸を用いた際に最も大きなナノ粒子が見つかることが、この研究から分かった。今回の結果は、包装への銀の利用についての考えをより明確にするには、ナノ粒子の毒性をさらに調べる必要があることを浮き彫りにしている。

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