Research Highlights
動的な系:形状を変えるナノ粒子
Nature Nanotechnology 2016, 416 doi: 10.1038/nnano.2016.58
ナノ粒子の設計は、その用途で決まり、生物医学的用途では、ナノ粒子が遭遇するさまざまな刺激物によって決まる。現行のナノ粒子設計は比較的洗練されてはいるが、こうした厳しい要求をまだ満たすことができない。トロント大学(カナダ)と東京大学のW Chanたちは今回、タンパク質の応答特性に着想を得て、形状を変えることによって、蛍光特性と細胞取り込み特性を変えられる動的ナノ構造体を開発した。
Chanたちは、DNAを用いて大中小のナノ粒子を組み合わせ、特定のDNA配列に応答して形状を変えることができる「コア–サテライト」構造体を作った。個々のナノ粒子は、組み立て用のDNA鎖と形状を変えるための別のDNA鎖を持っている。初めに、リンカーDNA鎖によって、大きなナノ粒子に小さなナノ粒子と中間の大きさのナノ粒子を接続する。形状を変えるには、接続用のDNA鎖を加えて、小さなナノ粒子を中間の大きさのナノ粒子に固定する。これに分離用のDNA鎖を加えるとリンカーDNA鎖が外れて、アセンブリー全体が変形し、中間の大きさのナノ粒子が、小さなサテライト粒子に囲まれた新しいコアになる。形状変化の各ステップにかかる時間は10分で、89%の効率で復元できる。大きなナノ粒子を葉酸(多くのがん細胞の葉酸受容体の標的リガンド)で官能化すると、この形状変化によって葉酸を隠したりすることができる。葉酸が現れたアセンブリーはがん細胞により多く取り込まれたので、このナノアセンブリーの形状を変えることによって標的分子の提示(従って細胞取り込み特性)を制御できることが示唆される。