Research Highlights
ネール温度以下で起こるゼーベック効果
Nature Nanotechnology 2016, 416 doi: 10.1038/nnano.2016.59
スピンゼーベック効果(温度勾配によって起こるスピン流の生成)はスピンカロリトロニクスの分野における重要な現象で、一般的には強磁性体でできた二重層に現れる。この現象が、反強磁性的に相関した常磁性体で観測されている。同様の効果が、長距離秩序を持つ反強磁性体でもネール温度(臨界温度)以下で生じる可能性があり、より高速で高性能のスピントロニクスデバイスの開発につながる可能性があると理論予測によって示唆されている。今回2つの研究グループが、典型的な反強磁性絶縁体でできたヘテロ構造体を用いて、こうした提案を裏付けている。
理化学研究所創発物性科学研究センターなどの関真一郎たちは、Cr2O3/Pt接合を調べ、アルゴンヌ国立研究所(米国)とウエストバージニア大学(米国)のS Wuたちは、MnF2/Pt接合に注目した。どちらの場合も、面内磁場と横方向温度勾配を同時にかけて、Pt面に沿ったゼロでないスピンゼーベック電圧が検出された。高磁場での著しい偏差から、単軸反強磁性体でスピンフロップ相が出現したことを示す明確な証拠が得られた。これは、バルク物質単独での特性評価と極めてよく一致している。こうした結果は、Pt面に出現するスピン流に反強磁性スピン波が影響を及ぼすことを示している。