Research Highlights
超分子触媒:キラリティーの増幅
Nature Nanotechnology 2016, 516 doi: 10.1038/nnano.2016.76
不斉触媒反応は、エナンチオピュアな配位子を持つ小さな有機金属錯体を用いて行われることが多い。しかし、小さなキラルバイアスが大きな配座優先性に変わるキラル増幅を用いる触媒はずっとまれである。この増幅過程は、ホモキラリティーの起源に不可欠であると考えられているが、まだほとんど解明されていない。今回、CNRS(フランス)などのM Raynalたちは、キラル増幅されたらせん状の超分子触媒においてエナンチオ誘導を実現できることを示している。
このらせんは、ベンゼン‐1,3,5‐トリカルボキサミド(BTA)が自己集合して形成される。Raynalたちは、アキラルなBTAホスフィン配位子とエナンチオピュアなBTAアミノ酸誘導体を混合することによって、ちょうど25%のキラルモノマーに効率のよいキラリティー移動が生じることを示した。この立体化学情報の移動は、アミノ酸側鎖から水素結合したらせん状集合を通って周辺のロジウム中心へ伝達され、高いエナンチオ選択性(鏡像体過剰率85%)で不斉水素化反応を触媒する。らせんが右巻きか左巻きか(掌性)で触媒反応の立体選択性が決まるので、BTAコモノマーのアミノ酸立体化学を逆にするだけで、両方のエナンチオマーを生成できる。これは、不斉触媒反応に「sergeants and soldiers」効果を効率よく利用できることを例証している。意外なことに、キラルなコモノマーの濃度が高いと、隣接する2つのホスフィンモノマーによるロジウムの配位が妨げられるため、エナンチオ誘導が実際に減少する。