Research Highlights
生体模倣触媒:燃料から燃料を作る
Nature Nanotechnology 2016, 516 doi: 10.1038/nnano.2016.77
細胞は、リン脂質二重層を横切るプロトン勾配と膜貫通ATP合成酵素を結びつけることによってエネルギーを生み出している。スペイン科学研究高等評議会、マドリード・コンプルテンセ大学(スペイン)、リスボン新大学(ポルトガル)のM Vélez, A De Lacey, I López-Monteroたちは今回、人工環境においてこの過程を模倣しようと試み、水素分子を燃料として使うことでATPを効率よく生成できることを示している。
Vélezたちは、金表面にヒドロゲナーゼ触媒が結合し、その上にATP合成酵素を含む膜二重層が埋め込まれた生体模倣システムを設計した。低電圧バイアスの下で、溶液中の水素が酸化するので、リン脂質膜を横切るプロトン勾配が生じる。このプロトン勾配は、1 pH単位程度になり、溶液中のリン酸塩イオンと反応して、ADPからATPへの変換を駆動する。
Vélezたちが開発したこのシステムは、可逆的で(ATP合成酵素は、ATPをADPとリン酸塩イオンに変換して、プロトン勾配を生成する)、光などの他の手段を使ってプロトン勾配を作るよく似た生体模倣システムより、回転率が約1桁高い。