Research Highlights
人工細胞:圧力の印加と解放
Nature Nanotechnology 2016, 516 doi: 10.1038/nnano.2016.78
微小管は、チューブリンタンパク質の重合によって形成される細胞骨格で、細胞の形態形成、運動、タンパク質輸送に重要である。チューブリンを巨大リポソームに封入すると、重合して生体細胞が作るものに似た突出部を形成することが示されている。しかし、こうした突出部を制御して繰り返し作ることはできなかった。名古屋大学、京都大学、東京大学の瀧口金吾たちは今回、静水圧をかけると、リポソーム内部の微小管の重合と脱重合を可逆的に繰り返し変えることができ、分子ロボティクスのための人工運動生細胞モデルを形成できることを報告している。
瀧口たちは、巨大リポソームの内部にチューブリンを封入し、高圧力顕微鏡を用いてさまざまな静水圧での形態の変化を観測した。大気圧(0.1 MPa)では、チューブリンが重合して伸張し、リポソーム膜を外側に押して突出部を形成することが分かった。圧力を60 MPaに上げると、突出部が迅速に短縮するが、圧力を解放すると数分以内に同じ場所に再び現れた。この過程を数回生じさせることができたので、微小管が静水圧に敏感であり、可逆的な変形を利用して微小管の重合状態を制御できることが示された。