Research Highlights
水処理:潜水マイクロボット
Nature Nanotechnology 2016, 516 doi: 10.1038/nnano.2016.79
近年のナノテクノロジーの進歩によって、環境汚染、特に重金属で汚染された水を処理する新たな方法が生まれている。多機能材料を用いたマイクロスケールの自己推進モーターは、従来のろ過法よりも性能が優れたものとなる見込みがある。しかし、同じマイクロボットを再利用して清浄サイクルを繰り返すことができないため、こうした方法は環境コストが高くつくものになっている。
マックス・プランク知的システム研究所(ドイツ)、カタルーニャバイオ工学研究所(IBEC)(スペイン)、南洋理工大学(シンガポール)のD Vilelaたちは今回、グラフェンをベースとした、水から重金属イオンを除去する再利用可能なマイクロボットを報告しているこのマイクロボットは、白金、ニッケル、酸化グラフェンの3層でできたチューブ構造体である。活性のある酸化グラフェンの外層が鉛(II)イオンを吸着する。重要なのは、吸着されたイオンを酸性溶液中で除去できることで、それによって構造や吸着効率を損なわずにマイクロボットを再利用できる。
Vilelaたちは、マイクロボットが液体の中を移動できるようにすることで、鉛の吸着が劇的に増えることも実証している。白金でできた内層は、過酸化水素の分解を触媒して酸素の泡を生成し、この泡がマイクロボットを前進させる。ニッケルでできた中間層は強磁性体なので、除染後にマイクロボットを水から取り除いたり、外部磁場でマイクロボットの運動方向を誘導したりすることが可能になる。