Research Highlights
生体粘着:くっつく植物
Nature Nanotechnology 2016, 716 doi: 10.1038/nnano.2016.126
セイヨウキヅタはほふく植物で、垂直面をよじ登る際に黄色がかった粘着物を分泌することが知られている。この糊のような分泌物は、球状のナノ粒子を含んでいて、セイヨウキヅタがよじ登る際に表面に貼り付くのを助ける。オハイオ州立大学、ジョージア大学、テネシー大学(いずれも米国)のM Zhangたちは今回、こうしたナノ粒子の主成分がアラビノガラクタンタンパク質であり、強い付着を促進するのに重要であることを示している。
Zhangたちは、セイヨウキヅタの細根から粘着物を単離し、さまざまな顕微鏡法や化学的手法を用いて、その特徴を明らかにした。粘着物に含まれるナノ粒子の直径は約70 nmであり、表面はpH 7.0で負に帯電している。フェニルグリコシド色素を用いて調べると、植物細胞の細胞外基質などの植物性の粘着物に一般的に存在するヒドロキシプロリンリッチな糖タンパク質であるアラビノガラクタンタンパク質の存在が確認された。このナノ粒子が示す溶液中の固有粘度が低いため、この粘着物のぬれ挙動は好ましいものとなる。さらに、ナノ粒子の大きさが小さいため、ナノ粒子はどんな表面の凹凸にも容易に入り込み、この植物がくっつく基板との密接な相互作用をさらに促進すると考えられる。また、カルシウムイオンが、ナノ粒子とペクチンの静電結合を促進することによって、この粘着物の硬化に寄与している。ナノ粒子、ペクチン、カルシウムイオンが結合すると、この生体粘着特性が再現され、粘着機構がさらに確認された。