Research Highlights
グラフェン:キラルなアンドレーエフホールモード
Nature Nanotechnology 2016, 716 doi: 10.1038/nnano.2016.128
グラフェンを用いたジョセフソン接合は、エキゾチックな物理現象を生み出す理想的な環境である。外部磁場の存在下では、グラフェンは量子ホール状態になり、その状態にギャップがあることから、バルク内部での通常のアンデレーエフ状態の伝搬が妨げられる。理論的な論拠から、両端の縁に閉じ込められた伝導性の2つのキラルチャネルが超伝導電流を維持できることが示唆されている。これは、単一の縁だけで2方向にキャリアを伝導できるトポロジカル絶縁体とは異なっている。しかし、こうした現象はまだ実験的には実証されていない。
今回、デューク大学(米国)などのF AmetとG Finkelsteinたちは、超伝導MoRe電極を持つグラフェン系ヘテロ構造体における超伝導と量子ホール効果の相互作用を実証している。著者たちは、選んだ電流値でのジョセフソン結合の特性強度に熱エネルギーが匹敵するサブケルビン限界で、バックゲートを用いた磁気輸送測定を行った。約2 Tの磁場で、接合の長さと平均自由工程のどちらよりも、サイクロトロン軌道の半径が確実に短くなった。同時に、両端の自由縁は、通常のアンドレーエフ反射を通した縁の結合を妨げるのに十分離れていた。意外なことに、微分抵抗の挙動は、縁に閉じ込められ空間的に不均一な超伝導電流の特徴を明確に示していた。