Research Highlights
金属有機構造体:酵素を模倣する
Nature Nanotechnology 2016, 816 doi: 10.1038/nnano.2016.145
金属有機構造体(MOF)は、ガス貯蔵、検出、触媒作用などさまざまな用途に用いられている。MOFの合成後修飾はいくつか知られているが、今回この概念がかなり深く調べられている。カリフォルニア大学バークレー校(米国)と国立コルドバ大学(アルゼンチン)のF D TosteとO Yaghiたちは、短ペプチドを金属有機骨格の孔に導入して、酵素に似た触媒としてのこうした材料の利用に向けて一歩進めた。
著者たちは、まず合成後修飾を行って、MOFの有機ストラットを官能化した。標準的なペプチド結合を用いて、結晶性と多孔性骨格を維持しながら、最大で7回の修飾が行われた。こうしたペプチドの付加によって、孔の空間が狭くなる。このことは、分子閉じ込めに利用できる可能性を示している。MOFの1つが、ブチルアルデヒドの立体選択的塩素化を触媒し、20%のエナンチオ選択性で生成物が得られることが見いだされた。次に著者たちは、配列特異的なペプチドの開裂を試みた。タバコエッチウイルスの活性部位に着想を得て、システイン–ヒスチジン-–アスパラギン酸鎖を持つMOFが合成エンドペプチダーゼとして設計された。このMOFは、短ペプチドのセリンペプチド結合を、24時間後に5%の収率で選択的に開裂している。
報告された触媒活性はかなり低いが、これは、この段階では均一に官能化された孔を含んでいない系の値を平均したものである。しかし、今回の結果は、MOFを用いる方法を選択的変換向けにさらに最適化できる可能性を示唆している。