Research Highlights

神経形態学的ナノデバイス:生体と張り合う

Nature Nanotechnology 2016, 816 doi: 10.1038/nnano.2016.148

ヒトの脳の高度に相互接続したニューロンネットワークは、極めて複雑なアルゴリズムを実行するのに、数十ワットのエネルギーしか消費しない。ニューロン間で信号を伝達するシナプスの数の合理的見積もりは1014に達するので、こうした驚くほど高い効率は、個々のシナプス事象に必要なエネルギーが極めて小さい(数フェムトジュールのオーダー)ことで可能になる。神経形態学的ハードウェアのアーキテクチャーを将来の新規計算法に用いるのであれば、人工シナプスの性能は生体シナプスに匹敵するものでなければならない。しかし、人工シナプスの効率の限界は、まだ同程度になっていない。

今回、浦項工科大学(韓国)のT-W Leeたちは、生体シナプスよりエネルギー効率が高い人工シナプスについて報告している。Leeたちは、コアシェル型有機ナノワイヤーを用いて、神経線維を模倣するデバイスを作った。シナプスの機能は、イオンゲルを用いたトランジスターで再現され、抑制性シナプス前パルスと興奮性シナプス前パルスの両方に似た信号が得られた。その結果ゲル内部に生じたアニオンとカチオンの差動ダイナミクスとナノワイヤーとの相互作用によって、神経信号の伝達が可能になり、さまざまな特異的シナプス機能が模倣される。Leeたちは、このデバイスを最適化して、シナプス事象当たり1フェムトジュールという平均エネルギー消費量を実現した。

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