Research Highlights
生体イメージング:大きくしてはっきり見えるようにする
Nature Nanotechnology 2016, 916 doi: 10.1038/nnano.2016.174
プロテオームイメージングや膨張顕微鏡法などの現行のイメージング技術では、個々の細胞の微細な細胞内構造の特徴をつかむことが可能になっている。しかし、試料の加工段階でプロテアーゼ消化と組織の切片化が必要なため、タンパク質が流出し細胞間結合が失われてしまう。マサチューセッツ工科大学(米国)、延世大学(韓国)、ハーバード大学(米国)のK Chungたちは今回、無傷の生体系のマルチスケール・プロテオームイメージングを可能にする新たな加工方法を報告している。
彼らは、3Dのプロテオームコンテンツと組織および臓器内部の細胞間の結合を保ちながら、組織を膨張させる方法について説明している。この方法は、プロテオームの拡大分析(MAP)と呼ばれ、ヒドロゲルと組織のハイブリダイゼーション工程において高濃度のアクリルアミドモノマーを使用する。アクリルアミドは、タンパク質のアミン含有残基とホルムアルデヒドの反応によって形成される反応性の高いヒドロキシメチルが、同じタンパク質の内部のアミド基や隣接するタンパク質と反応してメチレン橋を形成するのを防ぐ。タンパク質内とタンパク質間の架橋は、タンパク質が完全に変成し解離するのを防ぎ、その後の組織の膨張を制限することができる。Chungたちは、このMAP手法を用いて、プロテアーゼ処理をせずにマウスの全脳を4倍に膨張させることが7日以内でできた。さらに、微細な細胞内構造の超解像イメージングを行うために、膨張した組織の3Dプロテオームを通常の抗体を用いて標識化することもできた。この方法の欠点の1つは、膨張によって信号強度が弱まることである。