Research Highlights
ファンデルワールス・ヘテロ構造体:光熱電子効果
Nature Nanotechnology 2016, 916 doi: 10.1038/nnano.2016.175
金属半導体接合では、金属中の電荷キャリアが光励起され、半導体に注入されて光電流が生じるため、これを用いて低エネルギー光子を検出できる。しかし、界面のショットキー障壁によって、この過程を起こすのに必要な光子エネルギーの下限が明確に決まってしまう。今回、スペインのフォトニクス研究所と日本の物質・材料研究機構のF Koppensたちは、グラフェン–WSe2-–グラフェン垂直ヘテロ構造体には異なる機構が働いていて、理想的にはショットキー障壁より低いエネルギーの光子を捕集できることを示している。
彼らは、グラフェンの強い電子–電子相互作用と弱い電子–光子相互作用を利用している。こうした特性によって、光励起されたホット電荷キャリアの高速熱化が生じ、電子浴の有効温度が上昇する。その結果、熱電子効果を介してグラフェンからWSe2へ電子が注入されて光電流が生じ、この光電流が第二のグラフェン電極によって収集される。
Koppensたちは、バイアス電圧とゲート電圧の両方を用いてショットキー障壁を調節し、光電流の強度を効果的に制御することもできた。この熱電子効果は、ショットキー障壁の高さに対する光電流の指数関数的依存性と、入射レーザー出力に対する光電流の超線形依存性を観測することによって確かめられた。