Research Highlights

薬物送達:肥満を治療するパッチ

Nature Nanotechnology 2017, 1117 doi: 10.1038/nnano.2017.225

褐色脂肪組織(BAT)は、冬眠する動物や新生児に豊富な発熱器官である。白色脂肪組織(WAT)が、余剰なエネルギーを脂肪分子の形で蓄えるのに対して、BATは、非ふるえ熱産生を通してエネルギーを消費する。「褐色化」過程として定義されるWATからBATへの転化は、肥満や、それと関連する2型糖尿病などの病態の治療選択肢となる可能性がある。しかし、褐色化薬剤の臨床での使用は、無関係な臓器に影響を及ぼす副作用が障害になっている。

今回Zhangたちは、デキストランナノ粒子の中に入れた褐色化分子を局所的に送達するための、生体適合性マイクロニードルを設計・作製している。このナノ粒子には、グルコースオキシダーゼ(GOx)とカタラーゼも含まれており、制御放出が可能になっている。生理的濃度のグルコースが存在すると、GOxによってグルコン酸が生成されるが、この反応で生成される過酸化水素はカタラーゼによって中和される。その結果生じた局所的なpHの低下がきっかけとなってナノ粒子が分解し、薬剤が放出されるのである。

著者たちは、このナノ粒子によって白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞へのin vitro再プログラム化が生じることを確認した後、このナノ粒子を詰めたマイクロニードルパッチを痩せたマウスモデルと肥満したマウスモデルの鼠径部に貼り付けた。この処置の6日後、痩せたマウスは、内蔵の白色脂肪体の局所的な褐色化を示し、全身代謝が改善された。これは、褐色化薬剤の持続的な効果を示している。4週間後、食餌性肥満のマウスは、内臓のWATの30%を失い、エネルギー消費の増大、より高い脂肪酸酸化、体重管理の改善、より高いインスリン感受性を示した。こうした観察結果は、今回設計されたマイクロニードルパッチに抗肥満効果および抗糖尿病効果の可能性があることを裏付けている。

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