Research Highlights

スピンカロリトロニクス:スピンネルンスト効果

Nature Nanotechnology 2017, 1217 doi: 10.1038/nnano.2017.239

凝縮物質において電流フローの伝搬方向に垂直に外部磁場を印加すると、横方向に電荷が蓄積することがある。この現象は、電流の場合にはホール効果と呼ばれ、熱流ではネルンスト効果と呼ばれている。前者の現象には、いわゆるスピンホール効果という磁性版があり、スピン軌道結合がかなり大きい場合、電流によって横方向にスピンが蓄積される。しかし、熱流によって横方向のスピン蓄積が生じるスピンネルンスト効果は、理論的に主張されているが、これまで実験的に実証されていない。

今回、2つのグループが、磁性多層膜におけるスピンネルンスト効果の観測について報告している。S Meyerたちは、Pt/Y3Fe5O122層膜を用い、ホールバー形状のデバイスに沿って縦方向の熱勾配∇Tを生成して熱流jhを誘起し、逆スピンホール効果によって生じる電気信号としてPt層における横方向スピン流jsSNの伝搬を測定している。彼らは、不要信号の寄与を排除するために、隣接するY3Fe5O12層の磁性状態を制御してスピン輸送のさまざまな境界条件を調べている。これとは別に、P Shengたちは、重金属層の厚さの特性値がさまざまなTa/Co20Fe60B20/MgOヘテロ構造体とW/Co20Fe60B20/MgOヘテロ構造体を調べている。その結果、スピンネルンスト効果とスピンホール効果の大きさは同程度だが、符号が逆であることが見いだされた。

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