Research Highlights
反強磁性スピントロニクス:メモリーの改善
Nature Nanotechnology 2017, 217 doi: 10.1038/nnano.2017.11
磁気ランダムアクセスメモリーデバイスの製造に使われる強磁性材料は、不要磁場の影響を受けやすく、好ましくない不安定性が生じることが多い。さらに、情報をエンコードするには電荷電流が必要なため、こうしたデバイスの総電力消費量が増える。論文で報告されているいくつかの方法は、デバイスの安定性向上を目的とする反強磁性材料か、電場による書き込み過程が可能になるため電流に起因する電力損失が生じない磁気電気材料のどちらかを単独で使って、こうした問題に取り組んでいた。
今回、Kosubたちは、こうした方法を同時に使うことを報告し、磁気電気反強磁性体のα–Cr2O3を用いた室温で動作するランダムアクセスメモリーのプロトタイプについて説明している。常磁性分極率の大きなPt極薄層によって、α–Cr2O3の磁性状態の検知が可能になる。この対策によって、Cr2O3を強磁性材料と組み合わせずに済み、異常ホール効果を用いた磁気測定を介して全電気的読み出しを実行できた。さらに、より厚いPt電極と、読み出し段階で除去する必要がない静磁場を組み合わせて、データの書き込みが可能になった。
エネルギーが消費されるのは、書き込み段階と読み出し段階のみである。また、強磁性体を用いたデバイスと比べると、書き込みしきい値がかなり低いことも報告されている。