超分子化学:キラリティの一時的な変化
Nature Nanotechnology 2017, 217 doi: 10.1038/nnano.2017.12
生物化学的変換には、環境条件に適応する特異な能力を自然系にもたらす局所的なエネルギー交換が関与している。例えば、生物学的集合体は、特定の機能を果たし得る過渡種であることが多い。こうした集合体の過渡的な特徴は、集合体の形成を促進したり抑制したりする生物化学的反応の複雑な相互作用に起因している。人工超分子系における過渡的な集合体の再形成は、空間的かつ時間的に制御された形で環境の変化に応答できる適応材料の製造に役立つ可能性がある。Dhimanたちは今回、キラリティを一時的に切り替えることができる超分子集合体について報告している。
この系は、リン酸塩受容体で官能化されたナフタレンジイミドからなり、ATP分子とADP分子のどちらかとの結合に応答して自己集合し、らせんスタックを作る。特筆すべきは、ATPがP–らせんの形成を駆動するのに対して、ADPはM–らせんの形成を駆動することである。Dhimanたちは、2つの酵素を使っている。異なる経路を通して、その1つはATPを生成し、もう1つはATPを消費する。彼らは、ADPを生成する基質から始めて、M–らせんスタックの形成を観察した。次にATPを生成する基質を加えると、ATPを生成する酵素によってADPが結合した分子がATPに変換されるため、これがきっかけとなってらせんスタックのコンフォメーションがP–スタックに切り替わった。この時点で、ATPが高濃度で存在するためATPを消費する酵素が活性化され、らせんスタックのらせん性が元に戻った。Dhimanたちは、さまざまなパラメーターを変えることによって、過渡種の寿命をプログラムできた。