Research Highlights

シリコンナノワイヤー:そっくりそのまま飲み込まれる

Nature Nanotechnology 2017, 217 doi: 10.1038/nnano.2017.13

無機ナノ材料と生体系を統合できれば、細胞に直接組み込むことができる治療デバイスや診断デバイスを設計する素晴らしい機会が得られる。シリコンナノワイヤー(SiNW)には、生体適合性と特異な電子特性があり、その表面にさまざまな官能基が結合できるため、こうしたデバイスの理想的なプラットフォームとなっている。SiNWは、バイオセンサーや薬物送達剤として既に利用されているが、こうした材料が細胞に入る仕組みや、細胞内でのふるまい方についてはほとんど分かっていない。これは、追跡マーカーでナノワイヤーが標識化されていない系には特に当てはまるが、追跡マーカーはナノワイヤーと細胞の相互作用を変えてしまう可能性がある。

今回、Zimmermanたちは、血管壁の内側を覆っている内皮細胞が無標識のSiNWを吸収する仕組みを可視化する手法について報告している。この手法は、電子顕微鏡法と光学イメージングを組み合わせて得られた。彼らは、貪食経路を介して細胞への侵入が起こることを示している。つまり、細胞膜が周囲に伸びてナノワイヤーを包み込み、その結果できた小胞が細胞内で裂けるのである。この過程は形態に依存しているので、細胞はアスペクト比の高いワイヤーとそれ以外の形の粒子を識別できる。吸収されるとすぐに、小胞は細胞機構によって細胞の端から核の周囲の領域へ一気に運ばれ、最終的にナノワイヤーは大きなリソソーム区画に集まる。この新たな知見は、将来のデバイスを設計するようになれば、極めて有益であると立証される可能性がある。さらに、内皮細胞とマクロファージ細胞は自発的にSiNWを吸収するが、神経細胞と心筋細胞はSiNWを拒絶することが分かったことから、特定の種類の細胞を標的にするSiNWを用いた治療デバイスを作ることができる可能性があると示唆される。

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