Research Highlights

遷移金属ダイカルコゲナイド:2Dのトポロジカル相

Nature Nanotechnology 2017, 317 doi: 10.1038/nnano.2017.37

遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、半導体の性質が支配的で、いくつかの電子応用ではギャップのないグラフェンと比べて有利である。 TMD層の原子配列に付随して、多様な電子特性の構造相が多数存在する可能性がある。最近、WTe2では、歪んだ八面体構造の1T′相にトポロジカル電子状態を見いだし得ることが、理論的に示唆された。しかし、この多形は、エネルギー的に有利でないため、実験的に調べるのは難しい。Naylorたちは今回、1T’基底状態を持つ特異なTMD材料である単層WTe2の成長と特性評価について報告している。

化学蒸着(CVD)によって成長させた1T’WTe2薄片は、空気にさらされると急速に劣化するので、Naylorたちは、グラフェンの被覆層を用いて薄片を保護している。ラマンマッピングとX線光電子分光法による評価結果から、単層のWTe2薄片と数層のWTe2薄片に1T′相が確かめられた。また、それらの電子特性を調べると、2 Kで金属伝導が示唆された。さらに、磁気抵抗データから、弱い反局在の特徴が明らかになった。これは、トポロジカル絶縁体で一般的に見られ、1T′ WTe2単層にトポロジカル状態が存在することを示している可能性がある。CVDで成長させたWTe2膜の表面被覆率を高めて、この材料の電子特性をさらに評価するには、成長プロトコルのさらなる改善が必要である。

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