Research Highlights
スピンカロリトロニクス:バルクが全てではない
Nature Nanotechnology 2017, 317 doi: 10.1038/nnano.2017.38
材料に沿った温度勾配は、スピンゼーベック効果を介したスピン流の生成を示唆している可能性がある。磁性体では、温度勾配がマグノンの特性スペクトルにどのような影響を及ぼすかに基づいて、この効果のバルク特性が説明されている。金属/磁性体二重層では、界面の異なる側面に存在する電子浴とマグノン浴の相互に非平衡な状態によって駆動されるという、バルクとは異なる機構が提案されている。しかし、バルクの機構と界面の機構を分けた実験報告はまだない。
今回Kimlingたちは、金属のAuやCuと磁性体のY3Fe5O12の界面において、数ピコ秒の時間スケールで熱的に生じるスピン蓄積の進展を観測している。彼らは、より一般的だが擬似信号を検出しがちで時間分解能の低い、逆スピンホール効果に基づく手法ではなく、ポンププローブ磁気光学カー分光法を用いている。AuやCuを選ぶことによって、長いスピン緩和時間のほかに弱い電子フォノン結合も確保されるので、レーザー照射下の電子浴の高温での測定値が得られる。
Kimlingたちは、界面の機構に対応するのは短い時間スケールだけであると推定している。厚さの異なる磁性体層の実験データをうまく再現できるモデルが提案され、このことが確かめられた。