Research Highlights

溝の中に作る:グラフェンナノリボン

Nature Nanotechnology 2017, 417 doi: 10.1038/nnano.2017.76

グラフェンは、電気的性質や熱的性質が非常に優れているにもかかわらず、伝導帯と価電子帯の間にバンドギャップがないため、将来のデジタルデバイス用のトランジスターには適していない。バンドギャップがないために、電子流のオン状態とオフ状態を切り替えることができないのである。グラフェンを小さくすると、幅が10 nm未満のグラフェンナノリボンは、電子バンドギャップ示すため、デジタルデバイス用の有力な候補材料になる。しかし、グラフェンナノリボンの寸法、ひいては電子特性の精密な制御は困難な目標であり、しかもグラフェンナノリボンの端は一般的にギザギザで性能に悪影響をもたらす。

今回、Chenたちは、幅を制御して端が滑らかなグラフェンナノリボンを、誘電体の六方晶窒化ボロン(h-BN)基板の上に成長させる方法について報告している。彼らは、ニッケルナノ粒子を用いてh-BNをエッチングして、深さが単層で幅がナノメートルの溝を作った後、化学蒸着によってその溝をグラフェンで埋めた。エッチングパラメーターを変えることによって、溝の幅を10 nm未満に調整でき、得られた10 nm未満の幅のナノリボンは約0.5 eVというバンドギャップを示した。こうしたナノリボンを電界効果トランジスターデバイスに組み込むと、約750 cm2V-1s-1という高いキャリア移動度に加えて、104を超えるオンオフ比を室温で示した。ナノリボンの長さを制御し特定の場所に配置できるようにすることは、今後の研究の重点であるが、今回の方法によって、極めて細いグラフェンナノリボンに基づくデジタル集積回路の実現に近づくプラットフォームが得られる可能性がある。

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