Research Highlights

単一分子化学:分子の反応をカメラで捉える

Nature Nanotechnology 2017, 417 doi: 10.1038/nnano.2017.77

単一分子レベルで反応を追跡する能力は、化学における未解決課題の1つである。非接触原子間力顕微鏡法や収差補正された透過電子顕微鏡法(TEM)などの手法が用いられているが、どちらもこの課題に必要な時間分解能と空間分解能の両方を持ち合わせていない。今回、Chamberlainたちは、単一分子レベルで化学反応を実時間追跡し、化学変換の中間段階を捉えることができる、特殊なTEM構成を用いている。

このTEM構成における主な進歩は、電子ビームを用いて、撮像するとともに化学反応を生じさせていることである。さらに、電子ビームの強度を調節して、中間種を捉えることができるように反応速度を調整することもできる。

一例を挙げれば、Chamberlainたちは、単層カーボンナノチューブの内部にペルクロロコロネン分子を捕獲した。そのTEM画像は、ナノチューブの内部でペルクロロコロネン分子が規則正しく積み重なっていることを示している。次に、この試料に80 keVの電子ビームを照射した。その結果、エネルギーが弾道的にペルクロロコロネン分子に移動し、塩素原子が放出された。TEMでは、塩素原子が失われた部位は、原子番号の大きな原子に特有の明瞭な暗い点ではなく、明るい点として観察される。塩素が除去されたペルクロロコロネン分子は次に、アライン中間体の形成を通して隣接する分子とディールス・アルダー縮合反応をする。この段階はTEMでは、ペルクロロコロネン分子の積層秩序の喪失として観察される。最後にこの付加生成物が再配列して、細長い分子ができる。照射を続けると、ナノチューブの内部における重縮合とナノリボンの形成が観察されたている

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