Research Highlights
ナノエレクトロニクス:2Dマクロプロセッサー
Nature Nanotechnology 2017, 517 doi: 10.1038/nnano.2017.94
シリコンエレクトロニクスは技術的限界に近づいているため、次世代半導体の研究がかなり進んでいる。二次元遷移金属ダイカルコゲナイド、中でも二硫化モリブデン(MoS2)は、シリコンの後継物質となる可能性があると考えられている。しかしこれまで、MoS2を用いた電子デバイスは、電界効果トランジスター、インバーター、簡単な集積回路に限られていた。今回のWachterたちの報告では、MoS2を用いた複雑なデジタル回路を実現する際の技術的困難が、部分的に克服されている。
著者たちは、化学気相堆積法で2層のMoS2をチャネルとして成長させたボトムゲート型トランジスター115個からなる、面積が0.6 mm2の1ビットマイクロプロセッサーを作った。個々のトランジスターの特性は、平均電界効果移動度が3 cm2 V-1 s-1で、オンオフ比が108である。トランジスターが極めて少ないにもかかわらず、この回路は基本的な算術演算と論理演算を行うのに不可欠なサブユニットを全て含んでおり、マルチビットデータに拡大できる可能性がある。Wachterたちは、サンプルプログラムを走らせて、このマイクロプロセッサーの信号品位とレールツーレール性能が優れていることを見いだしている。MoS2膜が不均一で、マイクロプロセッサーを作製する際の転写処理時に他の欠陥が導入されるため、デバイスの総合的な歩留まりはまだ低いので、今回提示された電子プラットフォームの実現可能性は、今のところ小さい。