Research Highlights
カーボンナノ構造体:グラフェンに包まれたフラーレン
Nature Nanotechnology 2017, 717 doi: 10.1038/nnano.2017.144
C60フラーレン分子は、その動的性質や相互結合を電子顕微鏡で調べる前に、封入されることが多い。この目的には、カーボンナノチューブを使ってバッキーボール分子を包みピーポッド型の形状にする方法が成功している。この方法には、位置測定精度が高いことなど利点がいくつかあるが、単一の空間次元に束縛されることは明らかな欠点である。実際、表面にある自由なフラーレン分子は、自己集合して二次元構造を作りうる。
今回、MirzayevとMunstonenたちは、室温でC60分子を2枚の単層グラフェンシートの間に封入したことを報告している。こうした吊されたハイブリッド構造体は、高分解能走査型トンネル電子顕微鏡を用いて可視化され、その内部に、バッキーボールが安定した六方最密格子に配列した広い領域が観測された。それでも、孤立したバッキーボールは定常的に回転しており、さらに格子の端で拡散効果が観測された。
グラフェンは、安定した空間配置を維持するだけでなく、電子ビームによって生じうる変性からC60分子を保護する効果的な層となる。しかし、著者たちは、ビームによってノックオン損傷が生じ、分子間結合が作られるのを観測している。さらに、高度な二量化によって、単一分子が自由に回転する傾向が抑制され、ピーナッツ型のクラスターは接続軸の周りを回転する傾向があるが、三角形のクラスターは全く回転しないことも報告されている。