Research Highlights

薬物送達:血小板に乗せてもらう

Nature Nanotechnology 2017, 717 doi: 10.1038/nnano.2017.146

血漿タンパク質因子VIII(fVIII)は、重要な血液凝固剤であり、A型血友病の患者では欠陥があったり存在しなかったりする。fVIIIの全身注射によって、患者の血液凝固が改善されるが、治療中に抗fVIII抗体が形成されるため、症例の30%でこの方法は失敗する。

今回、Hansenたちは、fVIIIを標的化送達する代替法を立案している。この方法では、血小板が、fVIIIを充填した高分子電解質多層カプセルの輸送手段となる。このカプセルの最外層は、血小板とのハイブリッドを容易に形成するフィブリノゲンでできている。他の薬物送達法では外部刺激によって積み荷が解放されるが、今回の場合、薬物放出のきっかけとなるのは、損傷部位での細胞活性化によって自然に生じる血小板の収縮である。

著者たちは、マイクロ流体血管損傷モデルとウェルプレート法を用いて凝固を観察し、今回のハイブリッド系が、環境からfVIIIを保護して抗fVIII抗体の形成を減少させることを示すとともに、血小板の縮小によって生じる力学的な力によって、カプセルが割れて積み荷が損傷部位に運ばれることを実証している。さらに彼らは、凝固過程に関与するタンパク質であるフィブリンの濃度を測定し、健康な血液とfVIIIが枯渇した血液の両方で、fVIIIの全身送達と比べて濃度が増大し、血液凝固時間が短くなっていることも見いだしている。

最後に、彼らは、今回の方法がA型血友病の治療戦略であることを示す一方で、血栓症、感染症、がんなどの、血小板が媒介する他の病態に拡張できる可能性があることも示唆している。

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