Research Highlights

超分子化学:インターロックしたベンゼン

Nature Nanotechnology 2017, 917 doi: 10.1038/nnano.2017.193

ベンゼン環でできた超分子構造体は、ベンゼン環を三次元的に配置すると、ひずみが大きくなって構造が不安定になるため、ほとんどの場合平面状である。しかし、カーボンナノチューブ、ヘリセン、ポリフェニレンなど、平面でないために特異な性質を示す、全不飽和炭素化合物の注目すべき例がある。Dumslaffたちは今回、こうした一連の化合物に加わる、sp2混成炭素のみでできた、より大きなナノ構造体の基本単位となり得る新しいインターロック構造体について報告している。

著者たちは、シクロヘキサ-m-フェニレン大環状化合物2つからなる分子を合成した。それぞれの大環状化合物の向かい合っている2つのフェニレン環の間の共有結合を通して、こうした大環状化合物がインターロックされる。その結果、こうした4つのフェニレン環が硬い主鎖を形成し、そこから直交する形で大環状化合物が広がる。この最終的な構造体は、汽船の外輪に似ている。

こうした分子が配列して、極めて安定したアモルファス固体ができる。実際、tert-ブチル置換基を含むこうしたインターロック構造体のガラス類似物のガラス転移温度は、約152°Cと高い。こうした三次元構造体の安定性は、フェニレン環の密充填に起因しているようである。

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