Research Highlights
超分子化学:ケージ内部での反応
Nature Nanotechnology 2018, 1018 doi: 10.1038/s41565-018-0288-7
ナノメートルスケールのケージの内部の化学環境は、バルク溶液の環境とは異なることが多い。この効果は、ポケットを含むタンパク質に現れ、バルクの水では不可能と思われる化学反応が生じる。天然の系を手本として、ナノメートルスケールのケージに封入されている場合にのみ化学反応が生じ得る例がいくつか実証されている。こうした蓄積に加えて、今回Rizzutoたちは、金属と有機物が配位した構造的に硬いケージを設計して、特異な化学反応をする分子のホストにできることを示している。
具体例としては、末端アミノ基を有するZn(II)ポルフィリンが、フェナントロリンリンカーを有するZn(II)アニオンによって互いに結合して、内部体積が約3000 Åの立方八面体金属有機複合体が得られている。また、立方体の3対の面の中心には亜鉛(II)原子があり、ゲスト分子の二次配位中心として用いることができる。Rizzutoたちは、ゲスト分子がCo(II)ポルフィリンである場合には酸化電位が低下しCo(III)が形成されることを、高スピンNi(II)ポルフィリンである場合には高スピンから低スピンへ変化することを観測している。この2つの反応はどちらも、ケージの外側では生じていないと思われる。