Research Highlights

メソ多孔質材料:細孔内ではタンパク質が凝集しない

Nature Nanotechnology 2018, 1118 doi: 10.1038/s41565-018-0308-7

細胞内部では、タンパク質が活性を失わずに、高濃度で、あるいは表面に固定されて濃密溶液内に存在している可能性がある。対照的に、高濃度のバルク溶液では、タンパク質は凝集して活性が失われがちである。これは、例えばミオグロビンやリゾチームの事例であり、この2つの小さなタンパク質は、シャペロニンとの相互作用を通して細胞の細胞質内での活性が制御され、適切なフォールディングとアンフォールディングが行われる。今回Siefkerたちは、2種のメソ多孔質シリカ材料SBA-15とKIT-6の細孔の内部で、ミオグロビンとリゾチームの凝集が妨げられることを示している。

著者たちは、ミオグロビンタンパク質とリゾチームタンパク質のいずれかをこのメソ多孔質シリカに詰めて濃度を徐々に上げていき、小角中性子線散乱実験を行った。濃度が低い場合、散乱信号は詰まっていないシリカと区別できなかった。信号のコントラストが低いために、少量のタンパク質の存在は細孔壁のでこぼこと確実に区別できないのである。しかし、濃度が高くなって、タンパク質の最大充填密度に十分近づくと、強いものの立体障害されていない分子間相互作用を示すが凝集を示さない、種に特徴的な幅の広い特徴が散乱スペクトルに現れ始める。この液体に似た振る舞いは、タンパク質間やタンパク質と細孔壁の間の相互作用の増強に起因し、細胞質ゾルの内部で見られるのと同様に、凝集ではなく安定化を促進する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度