Research Highlights
がん:細胞の集団移動を抑える
Nature Nanotechnology 2018, 1118 doi: 10.1038/s41565-018-0310-0
細胞の集団移動は、細胞群全体が一団となって動くことであり、発生やがんの転移において起こる。この振る舞いは、カドヘリンを介した細胞間連絡や、アクチンとインテグリンを介した細胞とその環境の間の連絡によって生じる。こうした連絡経路を阻害すれば、がん転移を抑える方法が得られる可能性がある。インテグリンを標的にした金ナノロッドと近赤外線照射を併用して、この目標が実現されているが、この効果の根底にある機構はまだよく分かっていない。
今回Wuたちは、質量分析法をベースにしたリン酸化プロテオーム解析を用いて、上記の処置によって、細胞粘着やアクチン構成に関与する重要なシグナル伝達タンパク質のリン酸化パターンに変化が生じることを示している。その結果、細胞骨格において、特に細胞間結合部でアクチンフィラメントの形態が変化する。著者たちは、N-カドヘリンや密着結合タンパク質ZO-2など、細胞間接着に関与するタンパク質の発現レベルが同時に低下するのを観測している。