Research Highlights

人工遊泳体:メッセージを送ります

Nature Nanotechnology 2018, 218 doi: 10.1038/s41565-018-0072-8

粒子の中には、ガス分子を放出する化学反応を触媒して、溶液中を進むものがある。PtやAgなどのいくつかの金属によって過酸化水素が水と酸素になる不均化は、そうした化学反応のよく知られている例である。片側にだけ触媒中心があるようにヤヌス粒子が作られていれば、こうした粒子はある優先方向に動こうとする。Chenたちは今回、片方の遊泳体がもう片方の遊泳体に化学信号を送って、送られた遊泳体の運動速度を速めるように、別種の遊泳体間の通信システムを設計できることを示している。

メッセージを送信する微小粒子は、Ni、Au、Agの層で半分覆われたポリスチレンからなる。Ni層は、外部から微小粒子を導くための磁性要素になる。メッセージを受信する粒子は、Pt層で半分覆われたSiO2ヤヌス粒子である。過酸化水素が存在すると、金属Agが溶液に溶けて、Ag+と過酸化酸素が生じる。送信粒子が受信粒子の近くに導かれると、Ag+が金属Ptの上に析出し、過酸化酸素の作用によって還元されて金属Agになり、小さなナノ粒子が形成される。そして、新たに形成されたPt/Ag界面が、過酸化水素の分解を触媒し、受信粒子を推進する。Pt/Ag表面はPtのみよりずっと速く分解反応を触媒するので、溶液中の過酸化水素濃度に応じて、受信粒子の加速度は約3~6倍になる。

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