薬物送達:柔らかいナノ粒子の吸収
Nature Nanotechnology 2018, 218 doi: 10.1038/s41565-018-0073-7
ナノ担体の細胞取り込みとin vivoの腫瘍集積におけるサイズ、形状、界面の化学的性質などの物理化学的特性の重要性は広く認識されている。その一方で、ナノ担体の弾性の影響は、他のパラメーターに影響を与えずに弾性を適切に調節することが難しいため、まだあまり調べられていない。
今回Guoたちは、リポソームの外層とアルギン酸塩のヒドロゲルコアでできたナノ粒子を合成して、この課題に取り組んでいる。この組成によって、サイズと界面の化学的性質が均一で、脂質二重層によって制御され、弾性を変えられるナノ粒子の作製が可能になるのである。ナノ粒子の作製時にさまざまな濃度の塩化カルシウムを加えると、ナノ粒子の剛性に影響を及ぼすアルギン酸塩の架橋程度が異なるナノ粒子が得られる。得られたナノ粒子は、ヤング率を測定すると45 kPaから19 MPaというさまざまな弾性を示した。Guoたちは、細胞取り込みを調べて、ナノ粒子の弾性と吸収が逆相関していて、リポソームの殻のみからなる軟らかいナノ粒子が、正常細胞とがん細胞により容易に吸収されることを明らかにしている。さらに、蛍光顕微鏡法を用いて、軟らかいナノ粒子は、細胞膜と融合することによって細胞に侵入するが、硬いナノ粒子は、細胞膜の湾曲、ナノ粒子の包み込み、エンドソームの形成、細胞内部でのナノ粒子の解放を必要とするより時間がかかりエネルギー的に高価な過程であるエンドサイトーシスによって細胞膜を通り抜けることが明らかになった。エンドソームへの送達は、ナノ粒子が劣化するきっかけとなる可能性があるので、ナノ材料の弾性を調整して融合による細胞質への直接送達を促進することは、細胞内送達に役立つはずである。