Research Highlights
マグネシウムイオン電池:フラストレートした配位という解決策
Nature Nanotechnology 2018, 318 doi: 10.1038/s41565-018-0100-8
マグネシウムイオン電池は、リチウムイオン電池を超える候補技術の1つとされている。しかし、Mgイオン電池の安全上の懸念は小さく、理論エネルギー密度も市販のLiイオン電池の約5倍なので、その研究において最も厳しい問題は、マグネシウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションを繰り返すことができるカソード材料が少ないことである。この問題の一部は、Mg2+の電荷/半径比がLi+より大きいために生じている。Mg2+イオンは、インターカレートするとカソード材料を分極させる傾向があり、強い静電相互作用が生じてMg2+の拡散が制限されるのである。Andrewsたちは今回、V2O5の準安定相(ζ-V2O5)がマグネシウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションを繰り返すことができることを示している。
このζ-V2O5は、骨格に穴が開いた多形体で、この材料内にMg2+イオンが拡散できる。この開骨格の内部にはマグネシウムが配位結合し得る部位がいくつかあるが、こうした部位の全てで相互作用は弱いままである。著者たちはこの状況を「フラストレートした配位」と呼んでおり、この状況によって大きなエネルギー障壁を越える必要がなくなり、チャネルを通るMg2+の拡散が促進される。さらに、マグネゼーションには1%未満の小さな体積変化しか伴わないことも注目に値する。Andrewsたちは、この材料を使って、100サイクルにわたって可逆容量が90 mAh g−1のMgイオン電池を示している。