Research Highlights
顕微鏡法:ホットエレクトロンの検出
Nature Nanotechnology 2018, 418 doi: 10.1038/s41565-018-0126-y
走査型トンネル分光法は、貴金属、高温超伝導体、ワイル準金属、トポロジカル絶縁体などのさまざまな物質におけるホットキャリアの定在波を調べる汎用的な手段に発展している。しかし、プロープティップの位置によって、電荷注入点と検出点の両方が決まるため、注入点から離れたホットキャリアのマッピングは不可能になる。Leisegangたちは今回、ホットキャリアのセンサーとして単一分子を用いることによって、注入点と検出点を分離し、ティップ位置から離れたキャリア濃度の変化を追跡することができた。
著者たちは、Ag(111)表面のフリーベースフタロシアニン分子を脱プロトン化して、ホットエレクトロンに敏感な互変異性化スイッチを作っている。ティップをこの分子から離れた位置に置き、電圧パルスでホットキャリアを注入すると、最終的にこの分子の水素原子の位置がスイッチする。このスイッチングの確率は、この分子の場所のキャリア濃度に依存している。次にLeisegangたちは、ティップを分子の上に移動させ、非侵襲的なトポグラフィックイメージングによってスイッチの状態を読み出した。さらに彼らは、ホットエレクトロンの波動性を実証するために、1対のAg吸着原子がミラーとして働く原子スケールの干渉計を作った。その結果、原子ミラーの間隔に応じて、直接電子波と散乱電子波の間で建設的干渉と相殺的干渉が生じた。分子と干渉計を1つずつ加えると、2つの分子のうち、対応する干渉計の干渉条件とキャリアの波長が一致する分子の方へキャリアが移動する可能性が高くなる。