Research Highlights

表面増強ラマン分光法:湾曲した空間で高速分析

Nature Nanotechnology 2019, 219 doi: 10.1038/s41565-019-0386-1

銀ナノ粒子近傍の電場強度は、表面プラズモンによって増強される。分子が高い電場にさらされると、強いラマンスペクトルを放出する。この表面増強ラマン分光(SERS)効果は、非常に効果的で、最大で単一分子レベルの検出限界が実証されており、分光や分析の用途に用いられている。しかし、被分析物が銀ナノ粒子の極めて近くにある必要があり、バルク溶液から分子が拡散するのに数時間かかる可能性があることは、よく見られる欠点である。今回Maoたちは、単一分子検出限界を維持しながら、SERS分析の準備時間を60秒に縮小する方法を実証している。

著者たちはまず、電場の増強が媒体の屈折率の空間的変動に起因することを検討した。平坦な基板の上では、ナノ粒子の近傍でしか屈折率は変化しない。そこで、Maoたちは、小さな金のボウルの内側に銀ナノ粒子がある湾曲した基板を設計した。この湾曲した基板によって、ボウルの空間の内部に閉じ込められたバルク溶液に向かう強い電場が生じる。その結果、表面近傍に比較的一定な増強が生じ、ローダミン6G分子では、単一分子の検出限界を実現するのに、浸水時間が60秒しかからなかった。

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