Research Highlights
人工細胞:光をATPに変換
Nature Nanotechnology 2019, 319 doi: 10.1038/s41565-019-0408-z
人工細胞は、生体の細胞に不可欠な機能を模倣できる区画化された構造体であり、最小限の代謝経路や原始細胞の構造を理解し再現するのに役立ってきた。今回Chenたちは、光をアデノシン三リン酸(ATP)の形で生化学的エネルギーに変換できる人工細胞を報告している。この系は2種の人工細胞からなり、1つは光をプロトン勾配に変換し、もう1つはこの勾配をATPに変換する。
著者たちは、光をプロトン勾配に変換するために、バクテリオロドプシンを埋め込んだ金–銀ナノロッドでできた人工細胞を自己集合によって作製した。このナノロッドによって、バクテリオロドプシンに優先配向が生じる。その結果、光を当てると、バクテリオロドプシンは人工細胞の内側からバルク溶液へプロトンをくみ出す。この系は、定常状態でpH差0.52を実現できる。この効果は、金–銀ナノロッドとロドプシンのプラズモン共鳴の結合による。もう1つの人工細胞は、脂質膜の内部にATP合成酵素を含んでいて、外側と内側の区画の間に存在するようになったプロトン濃度の差を使ってATP分子の合成を駆動する。