Research Highlights
薬物送達:眼球へ送る
Nature Nanotechnology 2019, 419 doi: 10.1038/s41565-019-0433-y
脈絡膜血管新生(CNV)は、失明の主要な原因の1つであり、網膜と接触している眼球内部の組織層である脈絡膜に新しい血管が形成される。血管新生によって網膜の構造と機能が損なわれ、最終的に不可逆的失明につながる。CNVは、新しい血管の発生を阻害する薬物の眼内注射かレーザー照射によって治療されるが、いずれの治療でも網膜剥離や網膜切断などの副作用のリスクがある。 今回Wangたちは、静脈内で薬物を送達し脈絡膜を特異的な標的とする感光性ポリマーナノ粒子を報告している。このナノ粒子は、体内でのナノ粒子の活性化を妨げる光開裂可能なケージング基と共有結合した細胞透過性ペプチドによって官能化されている。このケージング基は、光毒性の低い光線を照射すると眼球内部でのみ開裂する。その結果、細胞透過性ペプチドが露出すると、このナノ粒子は脈絡膜の内皮細胞によって局所的に吸収される。著者たちは、この戦略によって、CNVの眼球内治療の標準薬であるドキソルビシンをCNVマウスモデルの脈絡膜に送達でき、対照群と比べて新血管形成が46.1%減少したことを示している。