Research Highlights

細胞顕微鏡法:細胞内の動き

Nature Nanotechnology 2019, 519 doi: 10.1038/s41565-019-0457-3

細胞機能は、高分子のナノスケールの組織化とその動的挙動の相互作用から生じる。しかし、それらが関連する仕組みを解明するのは、現在の顕微鏡技術に限界があるため困難である。つまり、現在の顕微鏡技術では、同時に数分子しか調べることができず、さらに細胞毒性があることが多い外因性色素を加える必要があるとともに、異種標識化や光退色が生じることが多いのである。

Gladsteinたちは、最近の論文で、細胞試料内部の高分子集合体によって後方散乱された光の干渉信号のスペクトル変化と時間変化を測定する、二重部分波分光法(dual-PWS)と名付けた無標識の光学技術を報告している。この手法によって、単一細胞レベルの細胞内高分子構造体の空間的構成と運動に関する情報が、ナノスケールとミリ秒の分解能で得られる。例えば、幹細胞内のクロマチンの高い運動性と構造的不均一性が確認され、これによって細胞分化のいくつかの遺伝子を調べることができるようになる。さらに著者たちは、dual-PWSを用いて、紫外線に曝露した細胞では、細胞内高分子集合体にこれまで知られていなかった、細胞骨格や細胞膜の損傷が関連する突発的な活動が起こり[細胞発作(cell paroxysm)と名付けた]、これが細胞死の初期段階に関連している可能性があると示唆している。

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