Research Highlights
原子間力顕微鏡法:帯電による変化
Nature Nanotechnology 2019, 819 doi: 10.1038/s41565-019-0530-y
電荷は、光合成、有機太陽電池、分子エレクトロニクスにおける分子の挙動を変化させることができる。しかし、X線回折、振動顕微鏡法、光学顕微鏡法などの既存の評価技術では、多数の分子の平均的な情報しか得られない。今回Fatayerたちは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、帯電時と放電時の単一分子レベルの変化を観測している。
著者たちは、絶縁性のNaCl多層膜に4種の分子を吸着させ、さまざまな荷電状態を調べることができるようにした。そして、CO官能化AFMティップから電子を制御して移動させて分子を帯電させ、ティップへ電子を移動させて分子を放電させた。その結果、高分解能AFM画像によって、複数の荷電状態における分子のコンホメーション変化、結合次数、芳香族性が明らかになった。Fatayerたちは、電子を付加すると、アゾベンゼンが平面状から非平面状へ変形することを見いだしている。また、ジアニオン・ペンタセンにおける結合長の変化は、その2番目と4番目の環にラジカルアニオンが形成されたことを示唆している。AFMとDFTの結果からは、荷電状態が変化すると、テトラシアノキノジメタンのジシアノ部分の形状の変化が明らかになった。さらに著者たちは、さまざまな酸化状態で結合次数が変わることで、ポルフィリンの芳香族性と共役経路が変化することを観測している。