Research Highlights

テラヘルツ分光法:イオン移動

Nature Nanotechnology 2019, 819 doi: 10.1038/s41565-019-0531-x

固体を通るイオン輸送は、燃料電池や電池などの多くのデバイスの機能に不可欠な過程である。過去数十年間にわたって新たなイオン伝導性材料を発見しようと多大な取り組みがなされてはいるが、その伝導機構の基礎的理解は、少なくとも同程度に重要である。今回森本智英たちは、テラヘルツ(THz)分光法を利用して、ピコ秒からナノ秒の時間スケールで電解質の光学伝導度を追跡し、この方法でなければ得られない微視的なイオン移動に関する情報を明らかにしている。

著者たちは、イットリアで安定化したジルコニアをイオン伝導体のモデルとして用いた。この物質では、酸素空孔が隣接サイトに移る前に、数THzの周波数で振動する。THz時間領域分光法を適用すると、測定されたTHz伝導度は全周波数範囲で単調に増大し、酸素空孔の大きな振動に起因することが確かめられた。また、活性化エネルギーは、可動種が乗り越えなければならない固有のポテンシャル障壁を反映しているが、温度依存性分析によって、その導出が可能になった。

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