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テラヘルツ駆動した異方性磁場による非線形スピン制御
Nature Photonics 10, 11 doi: 10.1038/nphoton.2016.181
超高速データ記録、量子計算、スピントロニクスなどの将来の情報技術には、光によるかつてない速さのスピン制御が必要になる。強力なテラヘルツパルスは、磁気励起に固有のエネルギースケールでスピンと結合できる。今回我々は、テラヘルツ磁場との線形ゼーマン結合よりもはるかに強い、電気双極子が媒介する非線形テラヘルツ–スピン結合の新たな機構を調べている。我々は、典型的な反強磁性体ツリウムオルソフェライト(TmFeO3)を使って、電子軌道遷移をテラヘルツ共鳴励起すると、規則正しいFe3+スピンの磁気異方性が変調され、振幅の大きなコヒーレントスピン振動が生じることを実証している。この機構は、本質的に非線形であり、テラヘルツ波形のスペクトル成形によって調節でき、効率はゼーマントルクを1桁上回る。全ての遷移金属酸化物では軌道状態が磁気異方性を支配するため、今回実証した制御方式は多くの磁気材料に適用できると予想される。